もう20年も前だったか、ゴルフの青木功プロが、「どうしたらゴルフが上手くなるのか?」という質問に、「上手くなりたかったら、まず良いスコアを出せ。」と答えたエピソードがある。何も答えていない様な問答だが、例え技術が足りなくとも、現在の自分の持てる技術で、コースをどう攻めるか、という自分なりのゲームプランの良し悪しでスコアは決まってしまう。良いスコアを出してからその後でスウィング(技術)を磨け、という意味だ。
それを証明する為に、青木プロは当時100を切るのがやっとだった騎手の武豊氏と同伴し、青木プロの指示通り18ホールを回った。当時の武豊氏の実力を見定め、相応のゴルフを展開したのである。すると、確か80台前半というスコアを叩き出した。テレビ放映を見て大変驚いたのを覚えている。スウィング(技術)の練習に明け暮れ、上手くゆかないとクラブ(道具)を替えるのに余念のない、私を含めた多くのアマチュアには、耳の痛い話である。考えてみれば、かなり応用範囲の広い考え方だ。人の生き方、企業の運営など、今ある資産を最大限に活用して、自分のスタイルやゲームプランをしっかり作ってゲームを戦うことの大切さを気付かせてくれる。
企業の戦略も、今持てる技術やサービス資産、また人材資本、マーケットでのポジションをよくよく見定め、自分の企業に合ったゲームプランを考え、実行計画を徹底する。中堅、中小企業にとってはそれはニッチ戦略となることだろう。とかく自分達の技量を超えたところにいきなり勝負に出たり、こうと決めたゲームプランを徹底出来なかったりすることが何と多いことだろう。
現代は、時代の変遷期であり、それにテクノロジーの爆発的な発展とが同期し、どの企業も新たな技術イノベーションを求めて必死になっている様に見える。しかし歴史的に技術的なイノベーションによる社会の変革は確かに存在するが実は少数であり、大半のイノベーションは、従来のゲームのルールや価値基準を変えるもの、または現在ある技術やノウハウの組み合わせだった、という。
我々のビジネスも、今ある技術や人材の持てる強みを再定義し、自分達なりのゲームプランを果敢に実行する中に、新たなイノベーションのヒントが詰まっている可能性がある。「技術があるからイノベーションが起こる」訳では無さそうである。
私も「技術→道具→ゲームプラン」の発想を改め、「ゲームプラン→技術→道具」の順番で自分達なりのイノベーションを目指したい、と思っている。
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