先だって作曲家の巨匠筒美京平氏が亡くなり、追悼番組がNHKで放映された。作詞家の松本隆氏は名コンビで、当時無いメロディーラインと絶妙な歌詞で一世を風靡し、当時の歌謡曲やポップスに一大センセーションを巻き起こした。我々昭和の人間に取り懐かしい名曲ばかりで、これも筒美さんか、と小さな驚きの連続だった。生涯3000曲を超える名曲を送り出したと言う。番組では「木綿のハンカチーフ」などを題材に、如何に当時斬新だったかを回想する。例えば、男性「恋人よ、僕は旅立つ・・・欲しいものを聞かせて。」、女性「いいえ、貴方。私は欲しいものはないのよ。ただ、都会の絵の具に染まらないで帰って」という風に、田舎と都会に離れ離れになった恋人の、掛け合い言葉で歌詞が構成されている。当時はこれが斬新で、メロディーラインも非常にスムースだ。また、歌詞が先に出来て曲を後からつけたのも珍しく、大作曲家の筒美氏は最初かなりの難渋を示したらしい。このゴールデンコンビで次々にヒットを飛ばしたが、筒美氏に時代が変わったと感じさせたのは、TRFの「Boy meets girl.」を聞いた時だった。作曲家は小室哲哉氏。筒美氏はリズム、作曲、歌詞を含め未来を予言する強烈なショックを感じたという。ご存じの通り、小室氏はミリオンセラーを量産し一時代を築いた。小室氏もその後時代の流れには逆らえないのだが、当時、筒美氏が残した言葉がある。「いつの世も時代が先に行って、プレイヤーを選択する。」というものだ。
今、時代の変遷期を我々は生きている。新しいテクノロジーがグローバルな影響力を持って時代を変革し、またコロナ禍で日常生活の変革を余儀なくされている。各企業も個人も新たな仕事の方向性や生き方を必死で模索している。ただ、やはり時代が常に先に行って、その時代に相応しい仕事やプレイヤーを選択するという事実は変わらないのかも知れない。
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