前回は、主題に関し芸術、芸能、スポーツなどの身近な例で、以前から感じていて表現しずらい現象を記載し、今回ビジネスへの適用について模索したいと思う。まず物の考え方の問題が大きい。ある方向性で真理であると思い込んでいた事が、長い人生で全く覆されたご経験をお持ちの方は多いだろう。最近よく聞くのは、特に若年層の人々が「コスパ」「タイパ」という効率重視の考え方に傾いているのではないか、という指摘である。SNSで一気に話題がシェア出来る時代になり、「分りにくいものを排除する」傾向があるのかも知れない。これもものの考え方の問題で、「逆も真かも知れない」という疑いを持つ余裕が無くなっているのかも知れない。相手を説得してゆくのに、それぞれ価値観が正反対の人々が相手であるというカウンターバランスを取り、その性向をよく勉強しておく必要がある。ソクラテスの哲学の源流は「無知の知」であり、逆も真かも知れない、と常に考える余裕を持って知の巨人となった。
ビジネスにおける新規開拓はどの業種、業界でも常にIssueの一つとなっている。とかく自分側の長所を相手に売り込む姿勢になりがちだ。しかし、相手側も様々な考え方をお持ちの筈なので、よく相手のご意見を拝聴する姿勢がまず第一である。相手の話のバケツの水がある程度放流された後でないと、なかなかこちら側の意見を言っても耳に入らない。相手の意見の拝聴をカウンターバランスとするのである。
佐藤可士和氏の「超整理術」というエッセイに書かれていたものだが、彼が業種、業態を問わず「経営改革」のコンサルティングが出来る理由を尋ねたインタビューに答えて、「私はある特定の業種、業態の経営経験も経営改革の経験も乏しいが、相手側の経営者にインタビューすると、経営者には必ず経営改革のヒントややりたい方向性が必ず潜んでいる。本人もそれに気付いていないケースも多い。それをよく拝聴して整理整頓して相手に提示する事に専念している。」と答えていた。当の本人は潜在的に答えを持っているが、それが頭の中で整理整頓できていないケースが殆どである、インタビュー技術と整理整頓の技術があれば解決できる、という信念である。だから「超整理術」というエッセイとなった。それに気付くのも天才の天才たる所以だなあ、と感心した。経営改革のノウハウや実績を必死でまとめてそれを相手にプレゼンするのとは対極である。相手側の真意をくみ取ることに、整理整頓のノウハウを合体させ、カウンターバランスを取っている。
なかなか上手く表現しずらい事柄ではあるが、一部ご賛同を得られれば幸いである。
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