世の中を動かしている幾つかの法則や、長い時間を経てそれが証明されて来た「世のカラクリ」の様なものがある。主題の法則もその一つかと思うが、不詳この歳になるまで知らなかった。この法則は、1958年に英国の歴史・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンが著書『パーキンソンの法則:進歩の追求』で提唱したものだが、二つの法則から成っている。
第一法則: 仕事の量は、完成する為に与えられた時間をすべて満たすまで膨張する。
第二法則: 支出の額は、収入の額に達するまで膨張する。
「人間の業」と言うものを考えさせられる。抗っても抗っても、人はそういう本性を持っているのだ、と言われている様だ。
第一法則を平たく解釈すると、
・いくら時間があっても、目標の達成如何に拘わらず、人は持てる時間をフルに使って時間を消費してしまう。時間の制約を設けないで、うだうだ考えてしまうから。本当に良いイノベーティブなアイデアを考えるのに時間量とは相関が無い。会社の1時間半と決まっている定例会議などが良い例である。
第二法則は、
・国家予算や顧客の予算は、例えそれが効果的でなくとも必ず予算通りに消費される。
・換言すると、本当に必要な予定外の予算は、予定された支出計画の一部を取り外す必要があり、受け入れるには困難が伴う。
・・・
これらの法則は、「人や集団は、与えられたものを使い尽くす本能を持つ」と言うことだろうか?自然資産の瀕死の状況や、CO2による地球の温暖化を見ていても納得出来る話である。
上記から、様々なことが連想される。
<仕事の効率化に対する改革>
1日7時間を与えられた場合、成果とは関係なく消費する為に働く、ということである。従って成果や効率を求めるなら、あるテーマで人はある時間以上集中出来ないので、どんどんメニューを変えて行動してみる必要がある。小中学生の授業の時間割には意味がある。1日実質6時間として3サイクル。テーマに1.5時間として4サイクル。 ただ、一人で完結できる仕事なら良いが、チームで行う場合は、一番速度の遅い人の都合にチームが引っ張られてしまう。
<戦略とオペレーション>
これもオペレーション的な仕事と、戦略的な仕事やゼロから1を生み出す様な創造的仕事とでは、仕事の効率は大きく異なる。前者に日頃従事していると、後者の人間はサボっている様に見えるし、後者の立場からは、決まったオペレーション的な仕事を馬鹿にする傾向がある。どちらも必要な仕事だが性格が異なり、忘れてはならないのは、どんな仕事にも両面が混在している、ということである。
オペレーションが無ければ、仕事の成果を現実化出来ない。戦略が無ければ仕事に発展や広がりが無い。
対策として、あるテーマを細分化し、細分化された異種目を組み合わせると効果的である。我々のビジネスの場合も、同様である。単数案件よりも複数案件を同時並行に、出来れば、顧客、候補者、ソーサーなどの多岐に亘るコンタクトポイントに対して、異なるスキルセットを駆使してを回してゆく方が効果が上がる。
<人のマネジメントと補充>
この法則は、組織の中での人のマネジメントにも重要な示唆を与えている。例えば、バックオフィス業務に、仮に不必要な従業員を増やしても、増員分の負荷を満たすまでバックオフィスの仕事量は膨張する、ということである。
然るに、企業改革の為の外部人材の受け入れは、始まるとその必要性を満たすまで膨張する。それは、通常、現行人材のリストラと並行して行われる。これは悲しい現実だ。
但し、外部人材の受け入れは、カルチャーの衝突という大きな課題が発生する。そこで、各社躍起になってカルチャー変革推進部などを設ける。カルチャー変革は、外部の仕掛けた側の人材を陥れようとする内部人材が、表面的には推進する賛同者である事が多い。変革による利害者との骨肉の争いを避けるには、利害とは「不連続の局面の新たな価値」を作り、それを認めさせ、WIN WINの関係を構築することである。
<新規顧客の開拓>
また、一旦、顧客の有力者と共鳴する機会があった場合、それを納得し信頼するに十分な裏付け情報を、顧客が勝手に膨らませてゆく。ソーシングによるクライアント紹介では、紹介した人物の信頼度が高ければ高いほど、この現象は顕著である。逆に、新規の顧客の開拓は、まだ信用の無い分、種々提案しても受け入れる余地は少ない。一定の信頼感の醸成が必須なのである。従って、まずやるべきは、力のある役員に「相談するに足る相手である事」を納得させることである。
・・・
この様な事は、分かっている人には認識されている「大人の知恵」の様な事なのだろうか?まるで、ルネッサンス期のイタリアの政治思想家マキャヴェッリの著書の様にシニカルな話だが、案外人間性の真相を突いているのかも知れない。何故若い頃にこの様な観点で考えるチャンスが無かったのだろう。自身の浅学を恥じ入るのである。
最近のコメント