ゴルフの上田桃子プロが一年半ぶりにツアー14勝目をあげた。かつての賞金女王が渡米し失意の帰国をしてから、彼女は元巨人軍の名コーチ荒川氏に師事し、心、技、体を鍛えて来た。最近、傍目で見ていてもゴルフの熟達とある風格が現れ始めたな、と私は感じ、改めてファンの一人となった。彼女に足りなかった事は、自分自身の中の「心」をコントロールする事、我慢強さの鍛錬だった様だ。それは昔から感じていたが、それをクリアすれば違った景色が見える、とのコーチのアドバイスを愚直に実行してきた、と言うのが優勝のコメントだった。
人は大小の悩みを抱え人に相談し、本を読み、先人に聞き、答えを求めようとする。しかしほとんどの場合、答えは自分の中にあるという。確かに人生の重要な決断は、既に結論が自分の中にあり、それを他の人の意見や書物の言葉で検証しているケースが多い。 ただ、努力と創意工夫で、難局を打開しようともがいて来た者のみに当てはまるのかも知れない。自分の中にあるのに気付かないとすると、それは何故か?それほど人の目が昏(くら)いとも言えるし、専門家なりの既成概念に縛られているので出口が見当たらない、というケースもあろう。しかし情報の整理整頓が上手く出来ていない事で回答が見つからないケースがほとんどだという。
そういう場合は専門のコンサルタントを活用し、情報を整理整頓してもらい、自分の持っている解決策を導いて貰うという方法がある。世の中のコーチングやコンサルティング的なサービスはほとんどこのジャンルと言っても良い。それだけ人は自分の事はよく見えないし、自分の分かるようにしか分かろうとしないのである。 逆に考えると人は皆、「分からないでやっている事」が多いのだという事に気付く。政治家も学者も教育者も芸術家もスポーツマンもビジネスマンも、仕事の本質も自分の本質も明確には分からないが、ある時ふっと気付くことがある、それが自然なのかも知れない。この点は実は深い議論なので別の機会に譲りたい。
さて、論理的に筋道立てて考えるのはもちろん大切だが、ロジカルシンキングは奥が深い。例えば、Critical Thinkingは優秀なエグゼクティブを選別するアセスメントツールの代表であり、これは訓練して会得するスキルなのである。雑音を排除し本質を論理的に考えプランを立て、しぶとく実行するのは、なかなか難しいものだ。
卑近な例で、いま流行りのダイエットを考えてみる。本質的には、自分の代謝力以上の摂取をするから太る訳である。従って代謝力を上げて通常の摂取をするか、代謝力はそのままで摂取量を減らすかの二者択一となる。後者は体力や免疫力そのものを奪い健康にも美容にも悪く、摂取量を減らすと筋肉まで減ってしまう。従って前者を選ばざるを得ない。故に、健康的に痩せる為には、何らかの代謝力の維持或いは向上が必須である。代謝はその六割を基礎代謝が担い、筋肉、肝臓、脳の代謝を上げること、残りの4割を担う運動代謝では、ハードなものではなく、軽い小刻みな運動を継続的に続ける事で、総合的な代謝を上げて行く方法が考えられる。ただ、これら全てを適切にこなすのは容易ではない。筋トレは効果的だが、万能ではないのである。
論理的にプランし実行することの難しさの一例だが、答えは自分で分かっているのだが、なかなか実行するのが難しいというケースがむしろ現実なのかもしれない。
更に、もっと重大な局面の解決策を考えてみる。緊急回避的な場合は、今出来る事を必死でこなすしかない。追い込まれた状況では、矢継ぎ早に打つ施策の幾つかがヒットして結果的に解決に導かれる事がある。そこには論理性に欠けるかも知れないが、スピード感と試行錯誤の実行力がある。これは、経済的、時間的あるいは生命的なプレッシャーの中で、良い本質的な解決策を考え抜くことは非常に難しいのだが、無我夢中でやっているうちに、ヒットして解決策を実行している。これは「自分自身の中に解答がある」、という事の証左なのかも知れない。苦渋の決断というものがあるが、勿論それを含めてである。
もし死んでしまったら、その後の意識は無いので、失敗か成功かも判別出来ない。その時、後に残された者への最低限の配慮がされていれば、それは一つの解決策であり、その人生はまずまずの成功だったとも言えるのかも知れない。
最近のコメント