デザインとは、事象同士の関係性を形にすることである。デザインという概念が、様々な分野に進出している。本来の原義に従い応用範囲を広げてきた、という方が適切かもしれない。組織デザイン、イノベーションデザイン、キャリアデザインなど、一見、インダストリー・デザインやファッションデザインなどの具体的な形を伴うものではない。特にコンセプトや概念をより良くデザインし、顧客の共感や信頼を得ないと、物やサービスが売れなかったり、起こるべきイノベーションも現実化しない、という文脈で使われ出したのである。
デザイン学も、ビジネスエリートの間で、従来のMBAに代わる必須科目になりつつあると言う。最近、ある車の造形、機能、全体を貫く設計思想などを実感する機会があり、様々なデザインの威力を痛感した。インダストリー・デザインの原型は、自然現象や動植物の動きや機能とそれを実現する形の必然性に遡る事が殆どだと言う。特に昆虫や食虫植物を観察するとよく分かる。「機能を達成する為の形をしている」という必然である。
逆に言うと、機能を突き詰めると究極の形になってしまうことになる。勿論、神の手には及ばないにせよ、何を作るか、それにどの様な機能を持たせたいか?を最初に突き詰める必要がある。これは組織デザインでも同様だ。「組織は戦略に従う」即ち「組織にどういう機能を持たせたいかが先である。「組織は機能に従う」訳である。イノベーティブな事が次々と生まれるにはどういう機能を持たせるべきかが課題であり、組織論はその後である。
最近、我が社にとってのDigital Transformationを達成する為の人材を探してくれ、という要請を受けることが多い。これは大型のイノベーションであり、今までにない発想力と実行力のある人材をお世話出来たとしよう。しかしながら、これはまだスタートに過ぎない。外部人材と内部人材が最も理想的に創発し合うインフラを作る必要があり、これをTalent Integration Designと呼ぶ。これも何かを達成する為には、どの様な機能が必要なのかを徹底的に検討するプロセスが欠かせない。最近ではこのインフラ構築のコンセプトリーダー役に、デザイナーを招聘するケースが見られる。デザインの事象同士の関係性を形にするという原義から、デザイナーが組織をデザインするのはむしろ自然なことかもしれない。
経営者が自分の会社を次の時代を担える様な会社に変貌させるのに、その分野に実績のある人材を求めるのは理解出来る。しかし、どういう会社にしたいのか?を考え抜くのは、本来経営者の仕事であり、他人任せにするのはちょっと話が違う。自分のことを他者にどうにかしてもらおうと言う、「主体の顧客意識」とでも言うもので、Ownershipの欠如である。これは現代日本の此処彼処に見られる現象であり、最近非常に気になるのだが・・・。
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