給料が安い、上司に正当に評価されていない!と思っている人は多い。しかし、給与は上司が払っている訳ではない。すべての人の給与は、顧客へ提供する価値に応じて、顧客によって支払われている。「提供する価値に応じて」というところが味噌である。一見当たり前の事なのだが、毎月一定額が25日に支払われたり、大企業で仕事の分担が進んでしまうと、給与は会社の社長や重役が支払っていると勘違いしてしまう。便宜的に顧客から得た売上を一旦会社にプールし、そこから貢献度に応じて給与を支払っているに過ぎない。社員がこの基本原則を忘れてしまうと、企業は早晩立ち行かなくなる。
従って「良い待遇」を得る為には、上司の評価を得るより先に、顧客にとっての価値とは何か?をまず最初に考えぬく必要がある。「良い待遇」の中には、やり甲斐のある良い仕事をして、良い立場を得る、という意味合いが含まれている。気の進まない仕事で1000円を得ることと、やり甲斐のある仕事で1000円を得ることは、抜本的に違うことなのである。この様な常識的に思われる事もだんだん理解されなくなってきた。便利や贅沢に慣れて、一から立ち上げて最後まで遣り抜く仕事の面白さや、顧客に奉仕し顧客満足の対価として金銭を得る、という仕事の本質が見えなくなって来ているのではないだろうか?
また、競合の中での差別化に腐心する場合もある。他者との比較よりも、顧客に本当にタイミング良く高品質で血の通ったサービスを提供することに、我々はもっと知恵を絞らなければならない。同じサービスも、相手方の必要とするタイミングで届けられないと、価値が半減してしまうことはよくあることだ。「一見当たり前の事を徹底する」ことで、競合の群れから抜け出る事が出来れば素晴らしい。
「異能人材待望論」
これからの時代に、どういう人材が必要なのだろうか?高度成長期には、ある程度優秀な均一化した労働力が必要で、護送船団方式という日本の強みだった。低成長、少子化、多様化、飽和社会のこれからの時代は、独自の顧客価値を創造する為に、異能人材やDiverseの活用が欠かせない、と言われる。ただイノベーションを起こした人材が後から「異能」と呼ばれる要素もあり、最初から異能人材がいて漏れなくイノベーションが起こせる訳でもない。従って異能人材は意識的に育てられるか、というテーマはまともな議論の様で、何か間が抜けている。
異能人材は昔から存在するし、今もこれからもある一定数存在すると考えた方が無理が無い。とすると、そういう人材をどう発掘するか?という次の問いに突き当たる。実はこれが我々の仕事をより難しくするのである。何故ならば、今まで社内にいない人物で、何か新しい事を起こしてくれる人がどの様な人物仕様になるか、描くのは困難だからである。
「善意の意図」リーダーシップ
顧客の潜在的ニーズを捉えたり想像したりする事無しに、革新的なサービスや製品は生まれない。また、それが社会性を持つまでに昇華されれば望ましいことだ。従って、イノベーションの方向性により、恩恵を受ける対象や規模が異なってくる。異能が存在しても、それを何に活かすか?という「徳育」というか、「善意の意図」のようなものが必要で、それがあってこそ顧客の価値に変換出来、それが長く続く。これは「異能を活かすリーダーシップ」の話なのかも知れない。
「我々の顧客は誰か?」
もう一つ、常に問い続けるべきこと、それは自分達にとっての「顧客」とは誰なのか?という観点である。或いは、これからの潜在的な顧客は誰なのか?である。時代の変わり目では、従来考えもしなかった層に顧客を広げたという事例はしばしば見かけられるし、人口動態や嗜好の変化、または利便性の変化により、今までの顧客の大半を失うという事もあり得る。顧客層が異なれば、アプローチもチャネルもソリューションも異なって来る。新しい顧客が一体誰なのか?また彼らは何を困っているのか?の本質を捉えること、顧客の潜在的なニーズに気付き、またそれを解決する善意の意図を予知することが第一義であり、そのソリューション(解決策)の開発や実現する仕組みや、ましてやIoT、AI. などのテクノロジーは、第二義的なものという見方も出来る。
「答えは常にその対象の中にある。」
多くの大企業は次の一手の開発に躍起になっていて、ベンチャー経験者を招くイノベーションセミナーは、経営企画幹部の叔父様達で満杯だという。ビジネスモデルの適用性、人口動態の激変、グローバル化ビジネスがあまりにグローバル化してしまっていて、どこのどういう顧客を対象にすべきか選択に迷ってしまったりする。しかし、顧客の悩みの真の解決策や新しい企業進化イノベーションの源泉は、実はその顧客の中にある。まともな経営陣であれば、将来の成長のヒントも必ず彼らの中にある。これは一見はっとする事柄である。悩んだ経営者は、何とか解を見つけようとして、部下や専門家に解を求めがちであるが、実は彼ら自身の中にある、という訳だ。
「自分達なりのゲームプラン」
従って、自分にとっての悩みや、その企業にとっての悩みの解決策が、自分自身、企業自身にあるとすれば、その人個人やその企業独自の個性を活かした解決策にならざるを得ないのである。ここに、「自分なりのゲームプラン」を立てることに集中しなければならない理由がある。借り物ではダメなのだ。
明日の日本のイノベーションとは何か?という様な議論が盛んである。しかし一般論ではなく、もっともっと自分事として的を絞る必要がある。自分にとって、その企業にとっての、強みを活かし弱みをも個性としてしまえる様な、泥臭いゲームプランを練り上げる必要がある。「個に迫れ!」とはある名経営者によく言われた言葉である。借り物ではなく、限りなくその人らしくあること、限りなくその企業らしくある事は、感動的なことだと私は思う。それが独自のイノベーションに繋がる様な気がする。
そして常に自分の給料はその顧客が価値を認め支払ってくれている事.、これを忘れないよう心掛けたいものである。
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