最近のNHKの震災復興サポートシリーズの一つを見る機会があった。岩手の陸前高田市広田町の復興の取り組みである。ご覧になった方も多いと思うが、ある大学の教授が継続的にアドバイスし、実践をサポートしている。その結果、町全体として活気が戻ってきた。大きく3つの取り組みである。
①「外から見て、自分達が気付かなかった宝を発見する。」具体的には、小売側(消費者側)の目を持った人に、広田町の漁業の実態を見せて、外の目から広田町の海産物を再評価してもらう。
②「ネットワークを広く活用する。」良いものがあったとしても、それを皆に広く知らしめる必要がある。結果として、今まで捨てていた貝類、雑魚(コストゼロ円)が実は「宝」である事が認識され、全国展開する小売りチェーンに展開でき好評を博すに至っている、と言う。
③「町全体を活性化する。」漁業だけでなく、面に広げ広田町全体を売り込む方法を考える。具体的には、長崎県五島列島の「民泊」という発想を取り入れ、大自然の中で生き物を捕獲し料理・加工する、作物を育て収穫しそれを料理する・・・などというプリミティブな体験を自宅を民宿として開放し、都会の子供たちを招く、という試みが始まっている。
もう一つのエピソード。
過去に日経情報ストラテジーに掲載された、キャノン電子代表取締役社長の酒巻氏の記事である。この方99年にキャノンからキャノン電子の再生を手掛け、「現場改善や生産性向上の活動には終わりが無い」との信念で、震災後も生産設備の電力を見直し、改善することで工場全体の使用電力を30%削減に成功されている。この方が、「変化が激しい時には、これまでやってきたことにもう一度見直しをかけ、今持っている「コア技術」が本当に今後も通用するのかを確認し、自分達のやっていることを更に強化することに力を入れています。コア技術といっても改めて見直してみると、意外に今の時代に合っていないところがあるのに気付くんですね。「一月三舟(いちげつさんしゅう)」という仏教の言葉があります。一つの月も舟が三か所に動けば見え方が違うように、見る位置や見方を変えることで全然違った答えが出てくることがある。」とおっしゃっている。
この二つのエピソードを読んで、「ああ、そうだったな!」と感じた。「一旦、自分達を外から眺めてみて、宝となりうるコアをもう一度再点検する。」事の重要性を忘れがちであった。実は現在、今後5年の弊社の方向性も含め、HPの見直しを外部コンサルタントに入ってもらい進めている。新しいIT技術やSNS(ソーシャルネットワーク)にどう対応してゆくか?の方に気が取られ、本来見直さなければならない、「我々のコア」を再点検する事が少し蔑ろにされていた。これが明確に定義されないと、HPのコンテンツは迫力のあるものにはならないのである。当たり前の事かも知れないが、渦中にいるとなかなか気付かない事がある。
我々はとかく無責任で一般的な情報に惑わされがちである。特にインターネットなど膨大な情報氾濫の中では、自分達に役立つ情報を抽出する技量が無いと、時に自分達の立ち位置が判らなくなる。実はそれらの情報は本来一般的な参考情報に過ぎないのだが、我々がプロとして、体を動かし汗をかく、金銭を払い独自の情報を得る、または戦って血を流した後に獲得した、「実のある固有情報」では決してないのに、それを鵜呑みにしてしまう危険性がある。どんな不況業種にも優れた企業は例外的に存在する。また、活況業種の雄であったとしても、あるきっかけですぐさま転げ落ちるのが、ビジネスの世界である。良い企業とは、「コア」の発見とそれに対する集中で、「小さくとも輝いている」。
「曇りなき眼(まなこ)で、真実(コア)を見抜く」ことが益々難しい時代に入って来たんだなあ・・・と思う。
最近のコメント