Control your destiny, or someone else will.という言葉がある。「人生の手綱(たづな)を自分で握れ、さもないと一生誰かに左右される人生となるだろう。」という元GE会長のジャック・ウェルチ氏の言葉だが、私の転職時に大変参考にさせて頂いたよく考えてみると自分自身のことなのに、「他人事」のような態度、行動、言動を取る人が増えている様な気がする。英語でいうOwnershipの欠如の問題なのだろうか?同時に、「公共の場」という言葉は既に死語になってしまった。自分以外の周囲に関して、全く無頓着というか無関心という手合いが多い様な気がする。注目すべきは、若者だけでなく、中高年にも増えつつあるということである。電車の中では皆、脇目も振らず携帯やスマホに夢中である。また、公共の面前での飲食や女性の化粧、順番待ちの列を詰めないで席取りに殺到する人々など、「恥の感覚」の欠如とも言える。私も時に責を逃れる事は出来ないが、最近の傾向は目に余る。こういう現象も、自分自身が損にならないなら、周囲の他の事には興味が無いという、広義の意味での「他人事」のジャンルに入るのかも知れない。
さて、本題の「他人事」とは、どういう事かと言うと、例えば見合いの相手の相性判断や仲人との人間関係に振り回され、自分達の問題であり、当人同士がよく話し合い心情を交わさなければならない問題なのに、その判断を親や仲人に求めてしまう、という例は判り易いかもしれない。あるいは、重要なIssueに対して実務経験の無い、取材不足のマスコミが安易な批判を繰り広げ、まるで具体的な対案が無い様な場合である。逆に「他人事」ではない事例として、ある有名ホテルチェーンは従業員個人個人にある権限を与え、顧客満足の為にOwnershipを発揮し、具体的に行動する事で有名である。要は、よく考えてみると実は自分の問題と捉えるべきなのに、「他人事」で済ましているケースは多い。それがどうなろうと、本人に対する直接的な損害や痛みを伴わない前提で批判し、具体的な行動に結びつかないという特徴がある。
転職のお世話をしていると、必然的に「社外に向かってチャレンジ」しようと思う理由をつぶさに伺うことになる。候補者の話すエピソードの具体性と臨場感はその方の「仕事振り」を如実に示す、。それぞれのプロジェクトの成功、失敗・・・それが会社経営にどう影響したと考えるか?その時どう行動したのか?あるいは失敗から何を学んだのか?などなど、その事に「主体的」にOwnershipを持って取り組んで来た方の話は、独特なユニーク性を帯び面白い。
経営スタッフの方々も弊社の候補者の典型である。ありがちな例として、著名な大企業で数々のプロジェクトを切り盛りされ、大変優秀でお人柄も良い。しかし長年大企業で働かれてきて転職経験が無く、自分でも気付かぬうちに色濃くその大企業のカルチャーを抱き込んでいらっしゃっる。仮に大企業も業績が低迷し大規模なリストラの最中だとする。その経営スタッフをインタビューしていると、経営陣批判が出始めるケースが多い。
いわゆる、「他人事」の様な発言に遭遇するのである。本来、優秀な人々である。経営スタッフである当の本人や会社幹部各々が、会社の不振を「自分の問題として捉えていない事」(危機意識の欠如)が実は、経営不振の最大の原因であることを、気付かない訳は無い、と思うのだが・・・
さて、原題に戻ろう。職種を問わず、自分が例えどの様な立場であったとしても、その仕事を「自分の仕事」ととらえOwnershipを発揮する事は大変重要な事である、と思う。私は、この仕事や物事に対する基本姿勢は、家庭や学校や会社でのOJTの中で良きメンターに指導されないと、なかなか身につかないと思っている。確かに子供の頃から先天的この資質を持つ例外も存在する。が、我々凡夫には何回かの挫折や失敗や成功を繰り返し、「ああそうか・・・」と自分で気付きがない限り体得出来ないジャンルの資質だからである。
勿論、その資質が無ければダメという事ではない。幾度も言っている事だが、「仕事とは面白く、深く、楽しく」出来るものである。実はその最大のヒントがこのOwnershipに潜んでいる様な気がする。何故なら、仕事でも遊びでも、自分で企画立案し皆の合意を得て、実施するためのリソースを準備し、実行体制を確立し、それを期日までに実施することは本来非常に楽しいものだからである。例えサポートスタッフであったとしても、Ownershipを持つ人々との仕事は清々しい。その結果が成功であっても、失敗であっても学ぶ点は大きい。特に自分でリスクを取った度合いが大きい程、達成感があるものなのだ。今日本に、グローバル人材枯渇論が盛んであるが、グローバル人材として認められる最も基本的な資質の一つ、「自分の問題として捉え、責任を取る」というOwnershipである事は少し皮肉である。
前述のジャック・ウェルチの言葉は、自身の人生を考える際大変判りやすい教訓の様であるが、企業の大小を問わず、役職を問わず、それぞれの仕事の中でOwnershipを発揮することで、仕事は苦労もあるだろうが何倍か楽しく、また自分自身にとっても自分の後進にとっても学ぶべきことが満載されている、という含蓄がある。若い人々が育って自分を追い越してゆくのも、実は大変充実感があるもう一つの楽しみである。一方で、「自分のせいではない」と不満を言い続け、一生自分で我が道を決めることなく、「環境に左右され続ける」方々も多く存在する。それが常習化すると、「他人事の人生」に陥ってしまう可能性が高い。これは非常にもったいないし、また実に恐ろしいことだと私は思う・・・。
Control your destiny, or someone else will.
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