無粋な小職の感想なのでお笑い頂きたい。時代を先行する技術や能力、それに伴うファッションは昔から世にインパクトを与えて来た。それは理解出来るのだが、今一つ分らないのが、昨今のビジネスリュックの流行である。写真は、街の一風景として溶け込んでいるカジュアルでサンダル履きの外人女性のリュック姿である。この様な持ち方はいいな、と思う。もともとサバイバル用途のリュックを、いつの頃からか、女子中学生が通学に使うようになり、少し長めに垂らしたリュックがファッションになった。また、それがいつしかビジネスシーンにまで浸透して来たのである。昨今のノートPCを持ち歩く文化もビジネスバックを重くしており、体のバランスを保つ意味でも両肩で担ぐ方が良い、とのコメントも読んだが、そういう側面もあるだろう。
ビジネスリュックで一番気になるのは、両手を空けたいと言う想いを優先してしまい、他者に迷惑をかけていることに無頓着な点。これはかなり恰好悪いのではないだろうか?満員電車では、後ろに担いでも、前に担いでも、斜めに担いでも例外なく邪魔になる。特に分厚いリュックを前に担いで満員電車に乗って来る者に、後ろから腰を押される苦痛は想像以上だ。リュックは棚にあげるか、手に持って前にぶら下げると良いのではと思う。
二番目に気になるのは、TPOにそぐわないこともあるファッション性である。女学生のカジュアルなファッションや、カリフォルニアの短パンとTシャツでもビジネスが成立する土壌なら未だしも、リュックを背負い大切な顧客の幹部クラスに会いに行けるだろうか?IT系など一部例外があるとは思うが、顧客よりも業者側がドレスダウンしてしまうリスクには違和感を覚える。であれば、背広にリュックなら良いかと言うと、これまた私には理解を超えている。日本人は大方貧弱な体格なのでリュックとのバランスが悪いように見えてしまうのである。
一方、リュックではなくても、背広にたすき掛けのバックも締まりがない。最近夏場で一般化しているYシャツ姿に黒ズボン+リュックのサラリーマンは、まず第一に汗臭さをなくしてすっきりとみせたいものだ。Yシャツ姿は下着に属するものなので公の場に出てはいけないと我々は習った。その為に夏のジャケットを羽織るのである。私は昭和で古いのだろうが、特に中高年男性には格好よくいてもらいたい。遊ぶ時、仕事に打ち込む時、お祝いの席に招かれた時、お悔みを告げる時、大切な人に言葉を告げる時、それぞれのTPOに相応しい服装があり、それは相手に対する敬意と尊重から来ている。これには分厚い歴史的な背景がある。
三番目に気になるのは、ビジネスバックとしての機能性である。最近のビジネスリュックは様々な工夫がされている様だが、リュックの中の積荷がぐしゃぐしゃになってしまうこともあり、一旦背負ってしまうと素早く欲しいものを取り出せない。取り出したプレゼン資料や見積書が皺だらけにならないだろうか?また、降ろすのが面倒くさいのか背負ったまま満員電車の座席に座っている方々も散見される。大きく前に突き出てしまうので、前に立つ人もかなり気を使わねばならない。リュックをビジネスバックとして持つのなら、最低限のマナーを考慮願いたい。
最後に、満員電車でリュックを前に担いで、空いた両手をリュックの上に乗せゲームに熱中しているのもどうなのかと思う。来年東京オリンピックで大勢の外国人が押し寄せる環境にあって、まず公共空間の車内で油断している人々と見做されるであろう。たかが持ち物に目くじらをたてるな、ではあるが、身だしなみにその人物の緊張感が現れてしまう。
加えて、最近の一気に増殖するジャパンタクシー(おしゃれな英国タクシーを参考にしたらしいが、全く似て非なるものだ。)、クールビズの加速によるファスト文化への急速な傾斜と、何故かそれに呼応する言語の乱れ、公共の場やweb上での一部の匿名者の傍若無人な振る舞いと、それを見て見ぬ振りをする人々、優先シートに我先にと座り込みゲームや漫画に没頭する若者達など、これらはごく一部の例外であってほしいのだが、日本人の本来持つ美徳や文化が危機に瀕している様に感ずる。シニアとしては大変気になるのである。
もともと日本人はある傾向に一気に傾く「血」を持っている。杞憂であることを祈るが、気をつけたいものである。
最近のコメント