アポイントの原則について、口うるさい事を書きたい。最近、こういう原則論をうるさく言う叔父さんが少なくなった。良くない傾向だと思う。
例1)ある候補者が、ある意志決定に悩んでいる。最後の意思決定をする前に再度小職との面談を申しこんで来た。いろいろ広く相談にのって欲しいとの事。一週間後の日程で調整を終え、その日の前日に、急遽、申し訳ないが風邪をひいてしまい日程を延期して欲しいとの要請があった・・・と仮定しよう。こういう事態は残念ながら最近よく見かける光景である。
例2)ある経営者に小職から面会を申し込んだ。かなりスケジュールがタイトな方である。「下野さんなら仕方ない。空けましょう。」との事で、日程が決まった。後日談ではあるが、かなり緊急なビジネス会議が開かれそれが延長されそうである。しかも、その前日にはかなり体調の不調を秘書に訴えていた様である。しかし、「私との約束は約束であり、一つの契約である。」との判断で、会議を途中で部下に任せ、体調を前日の夜出来る限り整え、当日の約束の時間の5分前に、いつも通りにこやかに席についていらっしゃる。
さて、この二つの事例を見て、皆さんはどう感じられるだろうか?細かい事かもしれないが、こういう細部にこそ、その人の人柄、ビジネスに対する姿勢がもろに表れてしまうのだ、と小職は考えている。まさに、「神は細部に宿る」のである。
例1は、「自分の都合で相手に時間を空けさせた約束を、自分の都合でキャンセルする。」訳である。相手はその空けた時間をKillされる。風邪だからしようが無い、という見方もあるかもしれない。しかしながら、自分にとって大切な事柄に相手の時間を取るのであれば、体調を万全にして臨むのが基本である。また、ビジネスの達人は肝心な時に決して風邪で休むような事は無い。何故なら、少し体調が悪いと気付いたら、早め、早めの対応を矢継ぎ早やに打って、リカバリーに努めるからである。本当に倒れる時には、「倒れても良い様な状態をつくってから」、おもむろにゆっくりと倒れるのである。(笑) 従って、例1は、おおいにNGである。日頃のビジネスに対する姿勢が見え隠れする。これが許さる場合は、不慮の事故に会ってしまった、肉親が急逝したなど本当に限られるのである。
昔、どんなに前日酒を飲んでも、翌日の定時には必ず出社の事、と先輩社員や上司に言われたことかと思う。それと根本は全く変わらない。一つの「訓練」であり、「習慣」なのだ。ある顧客の社長秘書は、アポイントの5分~10分前には、必ず本社の受付で小職を満面の笑顔で出迎えてくれる。そこから直通エレベータで社長室まで同行し、その間には、その時折の適切な短い会話で相手を和ませてくれる。「ああ、きちんとした会社だなぁ、」と凛とした清々しい印象でいつも感心する。受付や秘書の対応は、会社の正面看板であるという事である。小さな事ではあるが、それらの小さな信頼や感動の積重ねが、いつの日にか大きな仕事に実る事もある、というトップの強い意志を感ずる。ビジネスへの深いヒントを示唆している、と思う。
例2は、厳しいエクゼクティブとしての「哲学」が表れている。その方にとって、私共が例え業者であろうと、一旦約束した事は、一つの契約とみなし、出来る限り守ろうとされる訳である。我々業者としては、大変感銘を受けるし印象深い。これらの事が何故大切かと言うと、そういう事が積み重なって「深い信頼」が形成されるからである。そのエクゼクティブは、本当の難局をくぐる為には、「顧客や社内よりも時として業者がどう協力してくれるかが、成否を握ることもある」、という事を骨身で覚えているのではないか、と思う。ベンダー・マネジメントとは、その方が本当に困った時、どれだけの業者が「よしっ、あの人の為なら・・・」と立ち上がってくれるか、なのだろう。不思議と優れた経営者とは、ベンダー・マネジメントの達人が多い。人の機微について深い洞察力を持っている事は、リーダーの基本資質である。時折、業者に対し高圧的な方もいるが、トップとして短命であるケースが多い。
最近女性のマネジメントも多くお会いしているが、私のお会いする方々は、明らかに後者が多い様な気がする。しかし、女性の体調のコントロールは男性ほど体も精伸も単純に出来ていない様なので、なかなか難しく、それなりの準備と注意を怠らないのであろう。時折、いつまで経っても、「自分が、自分が」という自己中心的な方も見かけるが、ビジネスをする際はNGだが、一人の男性として見てみると、まあ、それも仕方ないかな・・・と、鼻の下を伸ばしてしまうのである。
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