このビジネスに携わって人のスキルや才能と多く向き合って来た。私は人のCompetencyを①土台(Faundamentals)②専門性(Expertize)③マネジメント力の3階層に分け、それぞれの各要素を10要素に分割し、実際にその人からインタビューした具体的な印象を書き込み点数化していた時期がある。総合点数と共にガンチャートでどこに偏りがあるかを評価したりもした。しかし、非常にバランス良く総合点数の高い方が、エクゼクティブとして必ず実績を残すかについては保証の限りではなく、ある突出した特質や専門性を持つ者が、ある企業の改革フェーズでは必要な事も経験した。才能があるのにある小さな成功で慢心し、転げ落ちる方も多数見かけて来た。あと少し頑張ればという九合目で諦めてしまう方もいた。
敬愛する作家のエッセイに、ある著名なサッカー選手が異国のチームでなかなか一軍復帰出来ずに苦労した時期のエピソードを紹介していた。作家も同じ異国に飛び帯同インタビューを試み、内緒で選手の練習風景も見に行ったという。その日はあいにくのどしゃぶりの雨で、練習グラウンドにはその選手独りがコーナーキックを飽きもせず繰り返していたそうである。その時、その作家は合点がいった。「才能とは努力を継続する力のことを指すのだ」と。
私はこのエピソードを読んで、努力を継続する事が実はれっきとした「才能」であるという事を初めて知ったのである。
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