さて、今回のテーマ、それは「大人の娯楽」の必要性である。我ながらそれを痛感した。
この激しい経済環境の中、業種やポジションに拘わらず、かなりの仕事人が強いストレスの中にいる筈で、精神的に参っていらっしゃる方も多いと思う。小職も若干その気味があった。それを一旦リフレッシュする意味で、大人の娯楽が必要である。また一旦頭をからっぽにして没頭することで、ふっと新しいヒントが得られる事がある。
あるきっかけでロードバイクを購入し通勤を試みた。面白い。自転車歴はこの20年程無かったのだが、一応基礎知識を蓄えた上で中級者用の練習会に参加。多摩丘陵周遊の70kmのコースであったが、途中のヒルクライム(20分程続く長い上り坂)でギブアップ。女性ライダーにも抜かれ悔しい思いをした。左膝は痙攣するわ、お尻は痛いわ、肩と首はバリバリ、おまけに油断した際、立ちゴケ(ペダルにシューズが密着していて、止まる際はずすのが遅れ自転車ごとバタンと倒れること)するわ、しかも雨でも皆知らん顔して突っ走るメンバーにおかれ雨の中とぼとぼ帰還したのだった。無謀であるとは言え、全く散々の経験であった。
しかし楽しかったのである。
いろいろな事が判った。まずロードの選手があの派手なロードスーツにカラフルなヘルメットで颯爽とした目立つ格好をしているのは、車社会の車道で危険な目に合わない様、車に対するサインなのである。しかも赤信号では必ず停車。道を譲る、歩行者の近くをすり抜けする際は、「失礼しまーす」と声を掛ける。マナーが良いのである。代替5~6人のチームで走行している事が多いが、先頭を走るリーダーは、後続車に対し「止まれ、徐行、危険物あり、左右に寄れ、左折、右折」などのサインを背中越しに適格に送るのである。何故あの様にくっついて走っているか?(互いの距離が50cmもない)これは重量10kg以下のバイクに対し人間の重さ、風の抵抗が最もネックとなるため、先頭の者を風よけにして走っているのである。左風の場合にはかもの軍団の様に少しななめのチーム編成となる。しかも平均時速30km以上で一陣の風となって通り過ぎてゆく。また基本、休憩をしない。自転車上で給水、栄養補給する。これは箱根などに行って帰ってくる事を考えると日の高いうちに往復出来なくなってしまう為、出来るだけ一定スピードで遠くまで行きたい為なのである。
また、体力に任せバイクを漕いでいると思っていたのだが、高速走行を維持する、ヒルクライム、ヒルダウン、休憩しながら走る、休憩しながら坂を登る(これには驚いた!)など、人間の体を科学した結果、合理性に立脚したかなりの技術と訓練を必要とする立派なスポーツなのである。箱根の山や日光のいろは坂などをノンストップで登るばかりでなく、タイムトライヤルまでするとは知らなかった。
本来、大人の娯楽とは、相文のリスクを伴い、肉体的、精神的なストレスの中でぎりぎりのチャレンジをする。その中で達成感や自分の限界点を知る、という様な要素が複雑に混入しているものであると思う。だから面白い。出来れば大自然に触れられればそれに越したことは無い。一般的に現代人の娯楽は手軽でチマチマしている。快楽のみを追いかける。だから飽きるのである。それをしている間は他の事を考えている余裕が無く、没頭していて頭の中は空っぽ状態になる。またそれがいいのである。
私見ながら、「大人の娯楽」を選択する際の注意ポイントとしては、肉体を動員することである。頭と体は実に連動していて、これはスポーツでも仕事でも同じことかと思う。行動してみないで、自分で自分に限界をつくってしまい行き詰まってしまうケースが多い。また出来れば今まで自分の知らなかった「違う世界」を知る事かと思う。そこには人智を結集した技術や匠がある。洗練された「仕組み」と利害を離れた「良い仲間」がいる。
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