数々のスキルフルな立場のある候補者とお会いする機会が多い。今年でこの業界10年目となり、職業柄、ずいぶん多くのキャリアの変遷を拝見して来た。候補者や顧客に寄り添い、そのクリティカルな局面のBefore Afterを連続的にハンズオンでサポートさせて頂き、はたと、この用な事は普通のビジネスでは、決して恵まれない環境である事を最近自覚し始めている。そうか、我々の職業だからこそなのだな、という事である。
そこそこのお立場の候補者が、ジャネラル・マネージャーとして違う環境にチャレンジされる時、いつもながら、思うことが2点ある。一つは、ご自分のスキルやノウハウが「方法論」や「仕組み」として外部に持ち出せるレベルに「普遍化」しているものなのかどうか?という客観的な視点をお持ちかどうか、という事。二つ目に、ご自分の経歴、実績、ノウハウ、スキルなどというものを、必要に応じ何時でも「ゼロクリア」して(一旦捨てる覚悟で)チャレンジする姿勢があるかどうか?という事。
これを「ゼロクリアする力」と呼んでいる。資質というよりむしろ力である。
意識的にこの事態には、こういう発想で物事に臨むべきと考える、「力」である。
実は先日、ある候補者から、20年余り培って来た経験、実績を一旦ゼロクリアするなどと、無理に決まっているじゃないですか、との反論を受け、その説明に窮した覚えがある。人は「思い込み」で生きている。小職を含めその例外となる方はほとんどいないだろう。我々は短期間に集中的にいろいろな人生や生き方とその顛末をつぶさに見ることのある立場である理由から、キャリアに関しては、少し「思い込み」から逃れているかもしれない。そのスタンスそのものが「思い込み」であるとも確かに言えるのだが・・・
さて、ご自分の過去の経験やスキルが一見全く通用しない様な場合、また、自分の既成概念が自分のスキルアップや会社の成長を阻んでいる場合など、やはり一旦「ゼロクリアする力」が必要である。これは、この広い世間には賢しらな人の判断を超えたものが存在する、というむしろ敬虔な気持ちに似ている。それに出会った時に落ち込む事も無く、一旦初心に帰って、淡々とやるべきことを実行する力と言えば通じるだろうか?一旦捨てる覚悟があれば、自由な発想が展開でき、その次のステップで、本来のご自分の経験やスキルがじわじわと役に立ってくる事も多いと聞く。経験があるノウハウがあり、立場のある人ほど、これは実際にはなかなか出来にくい事なのか、と思う。また、身を捨ててこそ、という様な過酷な体験がまだ無い方にもピンとこない発想だろう。
但し、過去の候補者やお付き合いさせて頂いている経営陣で成功されている方々を見ていて、言葉にこそされないが、こういう発想が間違いなくあることは確かだと内心思っている。
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