あらゆる自然造形物から、「形は機能に従う」という徹底さを今更ながら感ずる事がある。余分なものを剥ぎ取り物事の本質と機能を探求してゆくと、限りなくシンプルで美しく、理に適ったものになる。
さて、経営者や経営幹部という人種に多く接する事の多い我々の生業(なりわい)から、この基本コンセプト「形は機能に従う」がどの様にその方に具現化しているのかは、我々にとって常に興味のあるところである。経歴書だけでは情報不足であることが多く、結局1時間程の面談の最初の10分間程での印象が重要である。
我々が面談の席上で直接見聞き出来るものは、「外見と言葉」と思いがちであるが、実は「行動」も見聞きできるのである。
アポイントの申込みへの対応、当日の約束時間の遵守、メニュ-の選び方、店の従業員への態度、食事のマナー、面談後の対応など、ほんの一時間の中に、見事に日頃のスタイルが凝縮する。優れた経営人材は、ほぼ例外なく、迅速でシンプルでこころが行き届いている。かつて貝原益軒が人を判断するとき、「まず形を見、次に言葉を聞き、次に行いを見る。」と言ったそうであるが、まさにその通りである。
経営者の「機能」や「資格」を、①リーダーシップ②組織統率力③人心掌握力④本質を見抜く力⑤体力⑥事業を継続発展させてゆく胆力、粘り強さ⑦自己統制力などと仮定する。さて、問題はそれが経営者本人にどういう「形」となって現れて来るか?である。
前述の①~⑦の機能、資格を表す「形」とは如何なるものなのだろう?
1 全体の印象(明るさ)と緊迫感
2 風雪に耐えてきた顔、特に目の力、目の動き(笑顔の中に潜む厳しさ)
3 コミュニケーション能力(声の張り、トーン、傾聴力、核心をつく受け答え)
4 細部の清潔さ(歯、爪、襟足、ワイシャツの袖口など)
5 憎めない可愛らしさ。
6 服装のセンス(自分の体型に合ったサイズのスーツをシックに着こなす。)
7 靴とその手入れ。
8 総じて「自分なりのスタイル」を持っているか?
9 筆記用具等(これは如何に贅沢していても嫌味が無い。)
如何だろうか?
経営者としての「機能」をはたすべく、「形」が備わってくると考えるのが妥当だろう。しかしながら、「形」から入ってゆき序々に内容が整ってくる面も否めないところが興味深い。いずれにせよ、塩野七生氏が「男たちよ!」で看破している如く、内面、外見双方に「自分のスタイルを持つ」という事である。
昨日6月12日付けの日経新聞の「Cool Biz Executives」特集をご覧になった方も多いと思う。ワイシャツ姿を強要されたのだろうと予測がつくとは言え、僭越ながら一国の責任者、国を代表するビジネスリーダーとしては、如何なものだろうか?スーツの発祥地イギリスでは、ワイシャツはあくまで下着だと聞く。バリッとする時は勿論断然違うと期待したい。
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