大手コンサルティングファームは長らく実業企業の経営戦略室やCIO、CFOとしての役割を担い、特に日本市場ではこの20年間で素晴らしい勢いで成長を続けて来た。しかし、最近コンサルタント業界は揺れている様だ。過去にお世話になったパートナーからも実業のチャンスは無いか?という声を聴く。ある有名大手コンサルタント会社のマネージングディレクターから、「過去20年間の間、国産グローバル企業からかなり稼がしてもらった」との発言があったので、企業改革やイノベーションの為にコンサルタントは従事していて、現在の日本の大企業はロスト20年とも言われ総じて元気が無いのは何故ですか?と意地悪な質問をしたところ、「究極顧客の意向に従うしかないし、実行フェーズまでは付き添えないんでですよ」とあっさり返された。またどこかの中堅あるいは大手企業の経営職があれば紹介してくれと言われたので、実業での経営経験がありませんねと言ったら、コンサル企業のマネジメント職を歴任しているし、経営改革はお手の物です、とのお応えがあり正直驚いた。
大変優秀で大手の並みいる有名企業群からの信頼も獲得されている方だったので、余計にびっくりしたのである。実業とはその様なものではない。キャッシュと損益のバランスを問われ、株価と時価総額を問われ、コンプライアンスを問われ、人心の掌握を問われ、自分の出した方針の結果責任を負う。また時代に合った経営改革を先導しGoing Concernとしての継続性を担保する必要がある。最近では社外取締役を含む取締役会の経営監査機能を強めている傾向もあり、余計に厳しくなっている世情である。経営者の傍らで並走し、企業機密にも触れているので、もしや経営が出来ると想像しているのだろうか?タイガーウッズのコーチがマスターズトーナメントに勝てるかどうか?を考えてみれば答えは明白である。それほどの大きな乖離がある。優秀なコンサルタントが理解できない訳がないのである。勿論この方は例外かも知れないが、実業の経営職にチャレンジするならそれなりの覚悟と訓練が必要であろう。
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