「分とは人の器の大きさを言う。大きければ良い、小さければ悪いというものでは無い。大切なのは「自分の分の大きさを知る」ということである。俳優の故高倉健さんが晩年最後の映画を進めていた「あなたへ」という作品の中の一文である。彼はその作品の中で、心に響く言葉に出会えるかどうかで、作品の参加を決めていたそうである。
確かに自分の小さな器の中でその人の能力を十分に使いこなして世に貢献出来れば、それはそれで立派な生き方であろう。人の器を見誤って悩み多き人生を送り、人にも世にも貢献出来ない人生と比べると雲泥の差である。器の大小は別にしてその器の大きさの把握は、現代の複雑で情報過多の社会では、ますます難しくなっているのではないか?逆に言うと、その時代、時代で一見理不尽な社会の制約条件が存在する方がかえって人は深く考え、自分を本来の「自分の器」に導けるのではないだろうか。大きな制約条件を外してしまうと、多くの凡夫は現状維持に傾き。才能ある者は大きなチャレンジのきっかけを失ってしまう。
誰しも幼い頃は自分がもしや天才ではないかと思っているものだが、経験を積み世間に晒されて徐々に自分の器というものを実感させられる。過大評価も過小評価もせず正確に自分の分の大きさを知るのも簡単ではない。中には常に自分にチャレンジして知らず知らずに自分の器を広げている方もいるだろう。その逆もまたしかりである。
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