1. メガネを活用する
たかがメガネ、されどメガネである。メガネの用途には、視力の矯正の他に芸能人の変装用の大きなメガネのように、変身願望を叶える機能がある。メガネは掛ける人にとっては重要なアイテムで、時に顔の印象を決定してしまう。しかし、特に日本人男性の場合、個性的でかつその人に合ったものを掛けている方はまだ限られている様に思う。一般的な印象に紛れてしまうか、目立ち過ぎるかのどちらかである。シニアになれば、肌色は落ちる、シワは増える、全ての部位が垂れ下がってくるのが自然である。メガネは使いようで、欠点をカバーするばかりか、明るくお洒落に人を前向きにさせる。メガネを上手く活用して、いつまでも生き生きとしていたいものだ。
2. 私の場合
私は数年前まで、長年近眼用の他愛のないメガネを幾つか着用していたが、遠視と近視が混ざりメガネを必要としなくなっても、メガネ顔になり手放せなくなった。思えばその頃からメガネ道楽が始まった様だ。8年前にお気に入りのメガネとの出会いがあった。アラン・ミクリ製のセルロイドフレームのメガネで、ウェリントン型の変形である。茶と黒のフレームを二種類持っており、TPOに応じ使い分けて愛用して来た。デザイン性があり、かつビジネスにもプライベートにも使えるもので、我ながらセンスの良さが光る逸品だなと思っていた。
3. 選択肢は多岐にわたる
遠近両用のレンズを入れ込むのに、フレームを検討するのだが、なかなか良いものが見つからない。選択は多岐にわたる。メガネの形は大きく3種。スクウェア型、逆台形のウェリントン型、丸メガネのボストン型。最近はその中間のボスリントンなどが人気だ。フレーム素材でセルロイドとメタルフレーム、あとはフレームと肢の部分の素材やカラーのコンビネーションなど、無数の選択肢となる。
4. メガネ選びの楽しみ
その人の顔の形や目鼻のバランス、彫りの深さ、また年齢や歳の取り方、その人の纏う雰囲気や思想の方向性が明確になってくる度合いなどにより、似合うメガネは変化してゆく。年齢や精神の時熟と共に選択範囲が広がっていく。そこが面白いところである。最近若い人に流行りの丸メガネは、実はなかなか日本人男性には難しい。日本の男優でも、仲代達矢、奥田瑛二、原田芳雄、渡辺謙など、たっぱがあり、目鼻立ちがはっきりした美男子だがゴツい印象の人々か、チャーチルや吉田茂の様に、強烈な個性とパワーで他を圧倒するキャラクターなどに愛用されて来た。特に丸メガネは、その人の思想性によって活かされる様な気がする。
現在のアラン・ミクリのメガネはユニークで良いのだが、その印象が既に独特な顔の雰囲気を形成している。メガネを外すと人物不明だが、メガネを掛けてやっと自分自身になる程に馴染んでいた。歳のせいか、ますます目蓋が開かなくなり、顔の部位が全体的に垂れ下がりつつある。メガネを外すとモグラの様だという酷評もあるのである。しかし、私の様な特徴の無い扁平な顔でも、心配することは無い。ちゃんと似合うメガネがあるのである。
5. 最近よくあること
諸検討の結果、ウェリントン型の老舗、オリバーゴールドスミス製のフレームの厚いものにした。典型的なロイドメガネと言われているカチッとしたものだ。この店は300年も続く英国の老舗で、かつてジョン・レノンの愛用した丸メガネでも有名である。いつかはOGのウェリントン型という思い込みもある一方で、作品としても美しかった。
ところが、「作品として美しいものが、自分に合うとは限らない」のである。ネクタイ選びと同じで、鏡から最低5メートル以上離れて「全体の雰囲気を観察する目」を持つ必要がある。メガネ屋の店内での試着までは良かったのだが、フレームが厚く大きく重いので、外で掛けてみると日本人の体型や顔のサイズにはそぐわない事が徐々に明らかになった。フレームが厚く重いので、低い鼻では持ち堪えられずに落ちて来る。すると厚いフレームに目が隠れ、目元の印象が暗くなる。何かピリッとしないのだ。もう少し、ロマンスグレーになり、毛髪量も減少すると似合うのかも知れない。恥ずかしながら、「思い込みで全体像を見誤った」のである。
そんな矢先、やはりOG製のウェリントン型の台形だが、本体は細めのセルロイド製、肢に渋い金色のメタルフレームを使用しており、少々丸メガネ風にアレンジされているが、チャラけたイメージは無い。そんなメガネが、購入した前作の一段下の棚にひっそりと鎮座していた。一体私は何を見ていたのか?「ある事に拘っていると、近くにある大切なものを見落とす」ことは、最近よくあることなのである。
折角なので気に入ったものをチョイスし永く使いたい。あと10年現役で頑張れるかどうか分からないが、対面ビジネスなので第一印象は大切である。また、仏頂面で顔が怖くなって来ているので、キチンとしているが柔らかい感じが好ましい。立て続けに購入する愚に恥入りつつ、同じメガネ店員に相談すると、曰く、「どちらも良くお似合いですよ」。商売なのである。そう答えるしかあるまい。
最近のコメント