「三位一体」
物事は、三位一体の3つの行動のプロセスをサイクルさせる事で、熟達したり、ある目的を成就したりする事が多い。Plan Do Seeや、Hop Step Jump などはその典型だ。「考え、書き、発表する」Think , Write down & Speak outも、かなり重要な三位一体のプロセスである。
我々は、人の考えを理解したり、自分の考えを伝えたり、説得したり、証明したりする機会が多い。「考え、書き、発表する」という行為は、本来、三位一体で互いの相乗効果によりコミュニケーション能力と人間の思考の熟成を高めてゆく。これは、コロンブスの卵の様なもので、分かっている人は分かっている、というジャンルの話である。日頃考えを文章やエッセイに纏める機会が少ない方も、文章は書くのだがなかなか発表する機会が無い方も、この三位一体の一連のプロセスを是非体現して頂きたい。
「深く考える」
我々はThinkという言葉を安易に使ってしまうが、本来熟慮するとか、深く考えるという高度な知的活動を指し、日本で習う「思う」は英語ではsupposeが近い。深く考えてゆく(thinkする)と、ある考えの周辺を何度も何度も行き来することになる。ここで三位一体が威力を発揮する。考えがまだ未完成でも、文章にしたり人の前で喋ってみると良い。何が未完成なのかが明らかになる。
深く考えているようでも、本質的に考えられていないケースは多い。これは個人或いはチーム活動でも、仕事、スポーツや芸能あらゆるジャンルでも陥り易い現象である。私見だが、それはその活動に求められるものは何か?達成したいゴールは何か?を煮詰め、突き詰める作業の品質により、それに至る手段は異なって来ることに起因しているのではないか、と思う。
例えば、言葉にならない顧客のニーズが捉え切れず、表面的な提案をしても、顧客の満足は得られない。ゴルフでは、如何に少ないスコアでカップインさせるか?という本質を煮詰めずに、ひたすらスウィングの練習に明け暮れても上達しないなど、考えてみれば当たり前の事ばかりである。しかし、往々にして我々は本質の脇道に没頭し易い傾向を持っている。
いろいろ派生的なことに気を回さず、目的に一直線に迫りたいのだがなかなか難しい。事柄により、紆余曲折の末に本質に迫るのが自然な場合もあるかもしれない。短時間で本質に迫るには、訓練とアプローチ方法の工夫が必要だ。私は考える時、図示する事が多く、白紙のクロッキーノートに、考えの周りの情報との関連性を図に描いて本質が何なのかを考え、その後、文章に起こすことが多い。本質を突いた良いプランは常に「分かり易く、強く、シンプル」である。それは、まず皆に分かり易い。結果として、プロジェクトに持続性や伝播性をもたらし、粘り強くそれを続けることで、皆を巻き込んである目標を達成してしまうことになる。
「書き記す」
thinkした考えや想いを書き記す(しるす)こともまた大切である。これは、メモ書きでは無く、出来ればエッセイなど、短くとも起承転結のメリハリのついた文章の形で、ある考えを纏めてみることだ。最近この様なチャンスが激減している。書き記すことで、自分の考えを客観視する訓練が出来る。また、それ以上に、文章にまとめる事自体が、物事の本質を抜き出すきっかけになる事は、長年ブログを書いてみて分かったことである。手紙の文化が廃れてしまい、余程でないと、自分の考えをまとめることなど無くなってしまった。私見だが、近年のボケ人口の増加は、ものを書く機会の減少と、映画、TV、Webなどの受動情報に傾き過ぎていて、ポーッと受動している時間が多いことに深く関係しているように思える。アンチエージングが盛んだが、その本質は「自分自身で考え、行動する力」ではないだろうか?その内面のエンジンに溌剌さがないと、外面をいくら繕っても駄目てある。話題となっている事象の解説本を手当たり次第漁って、分かった様な気分に浸りたい諸兄も多いが、特に時代の変遷期には、「自分自身で考え、行動する力」を養わないと意味がない。
「発表する」
さらに、深く考えて書き記したものを、発表すること、また、そういう「場」を持つことが大切だ。何 かのコンセプトをプレゼンしたりする機会は多いが、人の理解度は意外にも低いと言われている。一回目のプレゼンで30%程度、従って、最低3回、手を変え品を変えて相手に説得しないと「分かった」ことにはならず、相手の行動も変わらない。これは一回のプレゼンで伝わらなくとも落ち込むことは無い、という重要な事実を伝えている。「理解、納得、信頼」というプロセスを経て、人は行動に移すと言われる。それほど人は直近の自分の興味分野以外、他人の言うことを聞いていないものらしい。或いは、自分の理解したいようにしか理解出来ない。まして少々高度な内容となると、余程分かりやすくまとめて、プレゼンの方法も工夫して何回か説得する覚悟が必要だ。発表後にフィードバックを受け、ディスカッションする機会を持つと、何処が分かりにくかったのかも理解出来る、お互いの深い理解に繋がる。
「考え、書き、発表する」というサイクルは、人と人とのコミュニケーションにとっても、また、物事の本質を見極める為の、切っても切れないプロセスである。情報過多と言われているが、このサイクルは、人に伝わっているだろうという思い込みや、本質的に考えないことの危うさを、はっきりと気付かせてくれる、「魔法の杖」と言っても過言ではない。
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