自分に合った仕事を選ぶと言うが、本来、長年培われた完成形の仕事が先にあり、我々は「成長過程にある半製品」である、という認識が必要だ。従って、仕事を選ぶという発想がそもそもそぐわない、とだいぶ前のブログで書いた事がある。社長業もしかり、エンジニアも芸術家も、文筆家もスポーツ選手も皆そうである。過去にその分野で極められた「仕事」が先にあるのであり、人が仕事に選ばれるのが真相に近い。まだ仕事も人生も初心者ならまだしも、いい歳のビジネスマンが、自分探しをし、どの様な仕事が一番合っているかと相談に来る。その中で仕事を選ぶという。その仕事で世間の一流の品質を発揮できる方は、確かに選ぶのかもしれないが、大半の人々は仕事から選ばれるのである。
その上で、良い仕事とは何か?を問うと、自ずから答えは見えてくる。成長過程の半製品を誰にも認められる製品やサービスに昇華させるものが、その人にとっての良い仕事である。それが自社内で可能なら転職の必要はない。縁とタイミングが合わず自社内にそのチャンスが無ければ転職も検討し、より広い知見を持った相談相手を持つことである。一旦その一流レベルに昇華させる事が出来れば、その後の応用性は一気に広がってゆく。一芸に秀でる人は皆そうである。従って、その途中過程で自分の目指すラインとは離れた、他の仕事をつまみ食いしてもあまり意味がないのである。
社長業は、会社の成長ステージ、グローバルの知見、M&Aなどを含めた多角的な成長施策、事業再生など、専門性は多岐に渡り、その完成形を目指すには多様な環境に身を置き、適用性を広げてゆく必要がある。また、内勤の総務のメンバーにとっても、定型業務を正確に迅速にこなすのは勿論、働き方改革等のプロジェクトに参加し、日頃からの問題意識を高めぶつけてゆく。多分、近い将来AIやロボットが定型業務をカバーしてゆくだろうから、総務の定型業務の知識は、働き方改革やAIコンサルティングには不可欠である。こうやって適用範囲を広げてゆくのである。
仕事は「事」に「仕える」と書く。事とは今風に言うと、プロジェクトであり、その達成の為に、自分にとってのクライアントに仕え(Serveし)、価値を提供することである。プロジェクトとは、限られた予算やリソース、時間的制約のなかで、ある目標を達成する事が課せられるものだ。この為に知恵を絞る事を、プロジェクトマネジメントと言う。それはポジションや役割を問わず、厳しく追求されるべきものである。「仕事」という名において貴賤は無い。この事が良い意味でも悪い意味でも理解されていないことが多い。内勤の事務職であっても社長であってもこの原則には変わりがない。
また、良い仕事を見つけることと、自分にとって適切なメンターを探すのは、私にとってはほぼ同義である。むしろ良い仕事の前に、良いメンターを、と私は言いたい。上司とは限らないが、仕事人生に於けるメンターを持つ事が出来る人とそうでない人とは、長い人生の中で雲泥の差が生じてしまう。これは人の出会いとは何か?という神秘を含む大きな課題である。何故なら、仕事というものがどういうものか?メンターの背中を見て学ぶ暗黙知の要素が強く、これはその人の価値観を形成する一大事だからだ。
一般的な良い仕事探しはあまり意味が無く、その人の現在のステージにとって良い仕事とは何か?を問わねばならない。新入社員がまだ世間を知らずに、有名大企業の内定を幾つか貰って、その選択に有頂天になっているのとは訳が違う。仕事とは具体的なプロジェクトであり企業ではない。良い仕事とは何かを考えるスタートラインに立つ為には、自分が成長過程のどの段階にあるのかをよく見極める必要がある。
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