候補者を採用する際、クライアントが最終的に求める資質として、コミュニケーション力がある。通常、ビジネスにおけるコミュニケーションは、5方向に対しなされる。内部では上司、部下、同僚、外部には顧客、業者(パートナー)の5方向である。People Management という言葉があるが、これは部下をどう指導し育成するか、と同時に同僚をどう巻き込めるか、上司を自身のストーリーに沿ってどう動かせるかも含まれている。また、顧客に対しての良好なコミュニケーションには、気を使われるのは当たり前として、業者に対して良い協業関係をどう構築するか?も、People Management である。そういう意味で、コミュニケーション能力は、人のマネジメント能力の根源であるとも言える。
長年多くの候補者に対面して来て、ある不文律に気付く。それは、優秀で伸びて行く方々はほぼ例外なく、5番目の業者とのコミュニケーションを綿密に丁寧に取っておられるということである。時折、業者に対して横柄な態度を取ったり、約束を守らなかったり、連絡をし忘れたりする方々がいるが、感心しない。これは自らが業者として顧客に接する辛さを、自分にとっての業者に当てつけているのかも知れない。この傾向が強い方々は、ある時手痛いしっぺ返しを喰らうことにもなる。逆に業者のことを考え丁寧に付き合って来た方々が、非常時に幾つかの業者の方々から救われる光景も良く見かけるが感動的な場面である。業者の方々は本当によく顧客を観察している。業者との付き合いは「どう人を動かすか?」の大切なエッセンスが詰まっているのである。業者として顧客にされたいと思うことを、顧客として業者に実践すれば良いのである。だが、この様なシンプルなことの実践がなかなか難しい。
採用面談で、あなたのPeople Management Styleを説明して下さい、と問われる事がある。この言葉は少々分かりにくい。例えば人の育成について、成功、失敗経験を通して、どの様なProvenな勝ちパターンや型を持つか?という事である。そのスタイルを聞いて、採用責任者はその人物の異環境における適応能力をみるのである。
印象的な話があった。ある方の「人や組織の育て方」の話である。まず組織を2、6、2に分ける。トップ2割は言わずとも試行錯誤で実績を出す。真ん中の6割のパフォーマンス如何により全体の数字は左右される。ベタの2割は期待値が低いのが通常だ。彼は、ベタの2割に注目する。ベタの2割の中をさらに3つに分ける。1) やる気も能力も向上心もないもの、2) 能力はあるのにやる気のないもの、3) 能力もやる気もない訳ではないが、段取りが悪くベタの2割に入ってしまっているもの。そして、3) の中から「素直さ」のある社員を一人ピックアップしマンツーマンでトレーニングする。それもセオリーと基礎訓練を徹底し、目標を設定し頑なに実行させるのである。すると不器用だが馬鹿の一念で実行するので次第に実績が出始める。そのうちに真ん中の6割のグループの仲間入りをする。本人もだんだん仕事が面白くなってくる。それでも努力をやめないので、とうとうトップ2割に参入してしまう。すると元ベタ組だった彼を馬鹿にしていた真ん中の6割がざわつき始めるのである。彼奴に出来て我々が出来ない筈はない、という訳で、皆、ビジネスの基礎やセオリーを見直し実行し始める。こうして組織全体を活性化させる、というものだ。
人や組織の育成に具体的な戦略と戦術があり、自分のスタイルがある。People Management Styleの好例である。
人をマネジメントするなど所詮出来ない、という覚悟が必要である。組織をリードすることは出来る。GEのジャック ウェルチは、Don't Manage but Leadという言葉を残したのは有名だ。人を育てている中で、実は自分が育てられている。マネージャーは、人の上に立つ立場として、その様な本質的なTrade Off の数々に早く気付く必要がある。
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