前回、グローバル経済の中で孤立してゆく日本人をテーマに大きな話題を取り扱ってしまったが、今回は、グローバル化へのぐっと身近な話題に話を転じたい。それは、「英語の上達法」について・・・である。
世界の七不思議(?)の一つが、日本人の英語力の問題である。中学生から学び始め、最高学府まで卒業しながら、あの先進国の日本人が何故あのように英語が下手くそなのか?(笑)という点である。百花繚乱の感のある英会話教室、豊富な英語教材と英語教師。何故なのだろうか?お会いする数多くの候補者の方々の中にも、もう少しブラッシュアップ出来ればなあ、惜しいなあ、という方が大勢いらっしゃるのである。あるレベルからの上達をどの様に短期・効率的に達成したらよいか・・・という悩みも多く聞かれる。私もかれこれ30年程も英語に悩まされているが、自分の英語力はこの際一旦棚上げにして、以下、大胆な独断と偏見で「英語上達法」を考えてみる。
まず、最初に気付くのは、英会話学校で英会話を上達させようという不逞の輩がかなり多いのである。英語もゴルフも仕事も、実は皆共通して「経験習熟知」の色彩の強いものであり、「型」を身に着け、「実践」で磨かなければ上達しない。それでは、どうやって「型」を身につけるかであるが、実は中学校の英語の教科書の丸暗記が実に効率的な方法なのである。ただし、何事も「短期」に「集中的」に訓練しないと難しい。実は、最初の300時間がKeyなのである。
極論を言えば、毎日3時間の教科書の音読を3か月忠実に続け、毎週1回程度の英会話教室で休憩、確認する・・・これで、(3x30+1x2x4)x3か月=294時間となる計算である。この300時間を過ぎると、何が起こるか?ある局面から異次元の不連続な局面へとポーンとワープするのである。(笑)嘘だと思われる諸兄は、騙されたと思って試してみるがいい。但し、周りからは、「あの人どうしちゃったの?」と映るぐらいと集中度が欲しい。たまに英会話学校を気分転換に利用するのが、正しい使い方なのである。逆に言えば、3か月でこのレベルに到達しなければ、ゆっくり、じっくり英会話学校に通っても、全く金を溝に捨てるという結果となる。判り易い例を挙げれば、週末にゴルフの練習場に20年通って、シングルになりましたという人があなたの廻りに存在するだろうか?応えは否である。ここまでが、最初の本質論である。
無論、音読以外に速読、ヒアリングも効果的ではあるが、「ライティングとスピーキング」、「ヒアリングとリーディング」はペアリングされた2つの異なるスキル・セットであることを再確認したい。すなわち、即時性のともなったライティング技術がスピーキングであり、速読技術(リーディング)が高まると、複数センテンスがブロックとして聞こえてくる(ヒアリング)という意味で、ヒアリングとリーディングが対になっている訳である。従って、速読、音読とヒアリングをセットに行うメニューを作ると効果的である。補足として大事な事、それは「教材の浮気をしない」ことである。一旦選んでしまったら最後、死ぬまで付き合う覚悟が必要である。自分を例に取ると、中学校の教科書を200回ぐらいは音読しただろうか・・・教材の浮気性は、(も?)許されてはならない。
さて、ここまでの「土台形成」無く、その次の「実践」に進んでも効果が無い。いつまでも、ブロークン・イングリッシュをぶちまけながら、「日常会話程度ならば・・・」とか言っているレベルから抜け出せない。実は、ビジネス会話の方が訓練し易く、日常会話こそ難しいのである。その次の「実践」であるが、出来れば仕事の場面で使い続けられればそれに越したことはない。が、これにはリスクが伴う。何故ならば、仕事の英語では、必要な時は突然やって来て、いきなりあるレベル以上の英会話能力が必要とされるというケースが多いからである。経営会議席上での厳しいやり取り、または顧客のエクゼクティブとの微妙な会話など、一旦失敗すると傷は深い。望ましいのは、失敗しても許される環境であり、出来れば正しい英語をその都度訂正し教えてくれる環境がベストであるが、これはなかなか難しい。一方で日本人は完璧にしゃべろうという意識が他国の第二外国語の人々と比べ、非常に強くそれが上達を妨げている面があり、家族とか社内の気のおける方々を犠牲にして(笑)、とにかくしゃべることである。
苦肉の策ではあるが、私の推奨するのは、「ある纏まった考え」を3分間ぶっとうしでしゃべり続ける訓練である。但し、ある考えが閃いたら、「しゃべり始めてしまう」ことが重要である。かなり難しいと感じられるだろう。最初は纏まった文を作ってからでも良い。しかし、チャレンジしてみて欲しい。実はここが第二のしかも最大の関門なのである。政治、経済、趣味あらゆる分野の気になる事柄がある筈である。例えば、「今回のトヨタのクレームに対する米国議会の対応はフェアか?」などなど。一応確認しておきたいのだが、しゃべるべき内容があって、はじめて自分の意見が述べられるのである。当たり前な事ではあるが、しゃべるべき内容が無いのに、しゃべろうと頑張っている英会話学校の諸兄も多く見かける。(笑)
当然ながら、この段階では、短文の羅列ではなく、あるロジックを担保する為の、関係代名詞、関係副詞あるいは接続詞が必要である。それらを駆使し、出来るだけ長い文章を作り、他人にインタラプトさせない訓練が重要である。それにはある「型」が必要で、これをフォーマットと呼んでいる。このフォーマットにのせる事で、欧米人にはことの他判り易く、英語能力は急激にブラッシュアップされるのである。ある命題があり、第一にそれに対する自分の意見の表明、第二にその根拠とロジック、第三にまたそれを裏付けするエピソード、第四に最後に結論に戻るというフォーマット(手順)をきっちりと踏む訓練をすることである。それを評価してもらえるメンターだが、この人材確保には金をけちってはならない。小職の場合、ある大使の奥様をメンターにつけた時期があったが、品格と美貌を兼ね備えた方で、モチベーションになったことは言うまでもない。
如何であろうか?かなり過激でかつ短期間で上達する方法かと自負しているのだが・・・
仕事の実力はあるのに、英語がいまいちで苦労している諸兄の健闘を祈る。
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