<アンチ・エイジング>
巷では、アンチ・エイジングの狂奏曲の感を呈し、高年齢国家に突入するというのに、年配の方々への風当たりは厳しい。これは、如何なものか?と日頃苦々しく感じている。「Agingに対するリスペクト」の無い国、日本。かつての儒教王国がである。
<クラス>
最近、ルイ・ヴィトンの大広告に60歳を過ぎたフランス女優のカトリーヌ・ドヌーブが登場した。駅のベンチに足を組み腰掛け、けだるそうに髪を下から上へ掻き揚げている瞬間を切り取っている。昔から彼女のファンであるが、最近の有無を言わせぬ大人の成熟感には目を見張るものがあり、あちらには「マダム」という誰もが目指す明らかな「クラス」があるのだなあ、と感じた。
<知恵の集積とリスペクト>
もともと欧米やアジア地域、勿論、我が日本にも、良い年を取る事に対する本人の節制と知恵の集積があり、周囲からはそれに対するリスペクトがあった筈なのだ。自然に年が刻まれ、自分の衰えを自覚しつつも、自制の利いたそれなりの風格を持ったご老人は美しいものである。無論、年配の方々もそれなりの努力をする必要がある。見た目の清潔感、ご自分のノウハウの客観視とテンプレート化、体のケア、気力の充実など、ただ、年配の一部の方々のマナーの劣化が最近気になるが・・・
<ノウハウの還元>
もう一つ、年齢を獲得して得られるのが、発想の広がりと自分の「ノウハウの還元」に対する自然な欲求である。小職も、衰えを感じて初めて知る人生の機微や、決して諦観ではない、物事に対するTrade Offの感覚が以前より増して、なんとなく判る様になって来た。その歳になって始めて知る「繋がった感」を感じていらっしゃる方も多いと思う。私事にわたるが、小職50歳を超えて、実は相撲の大ファンになり自分でも驚いている。若手がひたむきに努力し成長し、ある時点でブレークして世に出る(幕内で役を得る)、頑張れ!という感じである。ビジネス面でも若手の成長を見る、ましてはそれに自分が関与しているのは、実は極上に面白いものである。ある年齢になるとその様に自ずから出来ているのかも知れない。
<経営者育成の為の還元サイクル>
米国のデル・コンピュータでは、CEOに復帰したマイケル・デル氏が、モトローラから60歳を過ぎた方をハンティングし、Vice Chairmanというタイトルで、Full Timeで幹部候補生をサポートしていると聞く。皆からリスペクトされるポジションをFull Timeで与え、かつて成長期にグローバルに活躍されたノウハウを伝承しようという試みである。日本のグローバル企業も、かつて成長期に30台半ばの幹部候補生をグローバルな場で苦労させ、今の繁栄の基礎を築いた。その方々が現在、55歳~65歳のジャンルに固まってしまっている。今の成熟したグローバル企業で、かつて30歳台の人材に提供できた同様の挑戦機会が与える事がなかなか難しくなって来ている現在、かつてのリーダーだった初老の方々の本格的な活用が望まれる。我々は、この層の方々の30歳台へのノウハウの伝承とサイクルが、途切れの無い人材育成のサイクルとなり、経営者の育成に本格的に活用されていった場合、日本にも「経営者」の市場が誕生するのではないか?と考えている。これを、「経営者育成の為の還元サイクル」と呼んでいる。先進国で「プロの経営者市場」が未だ存在していないのは、残念ながら日本だけである。
「Agingに対するリスペクト」と、それらの人々の意欲の活用の必要性を最近強く思う。
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