今回は、ある程度成熟したマネジメントにとって(あるいは大人にとって)必須な資質として以前から気になっていたものを、自戒を込めて書いてみたい。
資質というか、物事に対応する際の、「Matureな態度」と言うべきなのだろう。それは、「環境の変化に対し、いちいち過敏に反応せずに、一旦柔らかくやり過ごす態度」の事である。
小職はどうも昔からこの資質については全く失格である。生来、短気に生まれついているせいか、ゴルフにおいてなどその性癖は顕著であり、自分のミスや環境から来るアンラッキーに対しいちいち苛立ってスコアを乱すのが常である。
また、エグゼクティブサーチという我々のビジネスにおいても、「人の人生」や「企業の生き死に」に深く関わっている重要な仕事ではあるものの、基本は「待ち」であり、自分から攻める訳にはゆかない。
顧客の要求、候補者の反応など、日々我慢を強いられる訳ではあるが、個々の小さな事象に拘り苛ついていると、本当に重要な局面に適切に、かつ迅速に対応する大局感を見落としがちになる。
あるIT業界のトップとサンフランシスコでゴルフをご一緒する機会に恵まれたことがある。75歳を過ぎ、なお健勝でダンディーな方なのであるが、かつては片手シングルだった過去の栄光があり、その頃と比べれば体力、技量、胆力などすべて衰えているにも拘らず、実に淡々としている。コースの真中を歩く姿は、「人間の品格」とは何かを考えさせ、痛く反省させられたものである。その方は自分のミスやアンラッキーに対して、内心は不愉快に感じているのかもしれないが、柔らかくやり過ごし、淡々として愉快なのである。無駄口はたたかないが、他人に対してはよく観察しており、ナイスプレーをそっと褒める事を惜しまない。その上、一見ラッキーとも思えるチップインや、ここぞというパットをねじ込む事が多かった様な気がする。この方のこの資質が、現役時代ビジネスにおいても如何なく発揮されたであろう事を彷彿とさせた。
物事を進める一連のプロセスの中で、どこが重要な局面かを判断する大局感は重要であるが、この態度、資質の欠如は、この判断を狂わせる危険がある。究極、「運を呼び寄せる」、「人望を集める」などとも何か深く関連していて、その重要性に今一つ気付いていない有能な諸輩には、訓練をしてでも獲得すべき資質なのかもしれない。付け加えれば、自身、ましてや周囲の人間の精神的な衛生にも影響がある筈なので、これは見過ごす訳にはゆかないのである。
日々、反省する毎日である。
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