ビジネス人生のそれぞれの成長過程を連続的に見させて頂くこの職業に就いてはや8年。キャリアのBefore Afterを直接あるいは間接的に見聞きし、年間数百人のExecutiveあるいはExecutive候補の方々にお会いして来て、最近痛切に感じる事があります。それは、「成熟度ポイントとプライムタイム」に関してです。成熟度ポイントとは、理想的には通常35歳ぐらいまでに迎えるべき、ビジネス上のコアとなるスキルセットの成熟度を指します。プライムタイムとは、「心、技、体」の3拍子が揃って名実共にビジネスの世界で活躍し貢献できる年齢帯を指します。この双方には相関関係があるというのが小職の仮説です。久々のブログですが、キャリアパスに関連する小職の見解の一端をご紹介したいと思います。次の4つのフェーズに分けて考えています。
①第一フェーズ(22歳~28歳ぐらいまで) :ファンダメンタルズの形成
②第二フェーズ(29歳~35歳ぐらいまで) :Provenなコア・スキルの形成
③第三フェーズ(35歳~42歳ぐらいまで) :経営スキルの醸成
④第四フェーズ(42歳~52歳ぐらいまで) :Provenな経営スキルの進展
①は、与えられた環境から得られるものが主体となりますが、次の様な要素の集合体です。
1 継続的に自己学習する能力
2 物事に取り組むエネルギーレベルの維持
3 コミュニケーション能力
4 ビジネス上の倫理観に関する訓練
5 物事に対する柔軟性
②に関しては、①をベースにして自分で獲得し、発展させてゆかねばならないビジネス上のコア・スキルです。これは、職種、職域を問わず(営業、マーケティング、開発、人事、経理など)必須なコア・スキルと位置づけています。
1 プロジェクト・マネジメント力
2 ピープル・マネジメント力、スタイル
3 物事の本質を見極める能力
4 プラン立案及び実行能力
5 過酷な状況でも発揮しうるリーダーシップ
さて、ここで、②のスキル醸成が自分のものになっているかどうか?についてのクオリファイがあります。
それは、それぞれのスキルを裏付ける「原体験」があり、その苦労の中から自分なりのスタイルを形成し、出来れば方法論まで高め、機微に応じ他人を説得してゆけるレベルかどうか、という点です。これが出来れば、転職されて環境が変化しても、Portableなスキルとして通用するのではないか、と思っております。このクオリファイ時点が「成熟度ポイント」です。
このポイントを過ぎた時点から、その方の人生のプライムタイムが始まるのが理想的です。プライムタイムは人により異なりますがその期間は、通常35歳~52歳前後ではないかとされております。経営力とは、スキル以前の体力、気力が大きくものを言う事は論を待ちません。さらに、経営スキルの醸成と進展について、議論を深めたいのですが本文では紙面の関係で次回の話題とし、「成熟度ポイント」の形成とそれに連続する「プライムタイム」に今回は焦点をあててゆきたいと思います。
欧米では、自分のスキルセットの標準化、テンプレート化は非常に一般的な事柄であり、それをPortable Skillとして業界を問わず転職しキャリアアップしてゆく文化があり、違う環境で通用してこそ、自分のスキルはProvenであるという暗黙の了解があります。文化の違いからか、単一民族という事柄が影響している為か、この種のスキルの標準化と世間的認知は日本ではかなり遅れており、結果、「成熟度ポイント」に達している方の絶対人口が欧米に比べ圧倒的に少ないのではないか、というのが小職の見解です。
本来、我々は、「成熟度ポイント」に達していない方に転職をお勧めしてはいけないのではないか、とさえ最近思い始めております。それ以降のプライムタイムでは、これらのスキルセットを存分にビジネスで活かし、その会社、あるいは顧客、あるいは地域社会への貢献、還元をすべき年齢であると思います。しかしながら、そのプライムタイムに順調に辿り着いた若き経営人材に対し、適切なチャンスを与えられていない時代が、日本の高度成長時代からずっと続いているのが、現在の日本社会の現状であると思います。従って、環境変化により、大きくビジネスモデルの変革を迫られる様なシチュエーションに対する対応力、発想力、柔軟性に関しては、Poorと言わざるを得ません。
これ、大きな問題だと思いませんか?
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