前から気になっていて、具体的事象に何回か遭遇するうちに、「何かおかしい!」という疑念が生じ、疑念は確信となって来た。逆に言うと、リーダーや将となるべき人物は、「やはり・・・」と納得させられるべき逆の資質を持っていらっしゃる。・・・「オーナーシップ(当事者意識)欠如」の問題である。判り易く説明するのが困難かもしれないが、歴然と存在する事象である。特に最近散見されるのは、「自身が当事者本人であり、役職や立場を問わずオーナーシップを取らなければならない立場であるにも拘らず、第三者的な態度、ひどい場合には、相手にとっての上顧客の如き態度を取って平然としているケースである。
「オーナーシップの欠如」で破綻する具体的な事例を挙げてみよう。
社内のシステム系大プロジェクトで、プロジェクト・マネージャ(PM)に任命されたA氏。上司でありメンターでもある執行役員B氏の信頼のもと、社内外の人間を巻き込み、プロジェクトプランを立て、役員会承認を獲得し、リソースの手配、プロジェクトをキック、彼なりに懸命に仕事を進めて来た。彼の配下には3人のプロジェクト・リーダーがおり、また、開発に関しては、外部の業者にアウトソースしてそれぞれ職掌を分担している。ここまでは一見問題の無い様に見える。ところが、プロジェクトが佳境に差し掛かった時、顧客から品質のクレーム、そのバックアップに伴う人的リソースの補充、予算の追加、納期遅延などの問題が噴出した。それに加え、プロジェクト・メンバーの疲労感もピークに達し、メンバーの二人が退職、A氏は担当PLの責任を追及した。プレッシャーを掛け過ぎたのかPLの一人はストレスからくる精神的なダメージで休職の事態となった。協力業者も、日頃無理を言い続けて来た経緯があり、今ひとつ協力的でない。執行役員のB氏にも緊急相談したが、他に緊急M&Aプロジェクトを抱えており、手一杯の状況である。いよいよピンチである。よくあるパターンではないだろうか?
こういう状況下における、上位マネージャー、下位マネージャーあるいは協力業者などに対するインボルブの仕方に「オーナーシップ(当事者意識)」あるなしが問われる。一見為すべき事をクリアしているつもりでも、「第三者的な立場」と「当事者意識」は雲泥の差がある。冷静に分析すれば、
①プロジェクトプランの立て方とクリティカルパスの見極めが甘い。
②状況を把握する為の、情報ネットワークの張り方とそのメンテナンスが悪い。
③People Managementのやり方に問題がある。
④破局的な状況に陥るまで、悪い報告をせず、上司及び関連組織への適宜のアラーム報告が出来ていない。
⑤また、業者管理(ベンダーマネジメント)のスキルが稚拙であり、協力業者をプロジェクト成功を左右するパートナーとして接してきたかどうか、に疑問が残る。
など、PMとしての力量不足の感が否めない。前述の①~⑤のそれぞれに対し、職掌を分担したにせよ、肝心なところについては、常にオーナーシップ(当事者意識)を持ち、皆を巻き込んでゆく覚悟があれば、この様な事態に陥らずに済んだ、というケースが多い。これは一般的なプロジェクト・マネジメントの「スキルの問題」というよりは、「本人のオーナーシップ(当事者意識)」の問題の方が比重が高いのではないか、と小職は見ている。自分がオーナーである以上、人に任せっぱなしにしない、また、自分の廻りの人達が困難に直面している事があれば、そっとサポートに廻る、場合によってはプレイング・マネージャーとして現場に降りてゆく。悪い報告は軽微なうちに報告・相談・連絡を徹底する。この様な気質は、「スキル」というよりは、「覚悟」と「訓練」の問題だろうと思う。仕事の出来、不出来は「スキル」ではなく、「覚悟と訓練」に帰することが多いのである。
ジャック・ウェルチ氏(元GE CEO)は、リーダーシップの特質として、
①前向きなエネルギー、好調時にも不調時にも健全な活力と楽観的な姿勢でどんどん突き進んでゆく能力。
②他の人々に活力を与え、彼らの前向きなエネルギーを引き出す能力。
③気迫。厳しい要求を突きつける能力。「イエス」「ノー」をはっきり言う能力。
④実行力。物事をやり遂げる能力。
⑤情熱を持ち、すべてのことに深い関心を持ち、精力的に働き、自分のすることの価値を信ずる能力。
の5点を挙げている。リーダーシップは永遠のテーマであり、時代背景や環境や時間感覚によっても変化するべきものかと思う。ただ、仕事を進めてゆく中で要求されるリーダーシップの基本的特質は、実はオーナーシップ=「覚悟」と「訓練」に含まれていると言っても過言ではない、と最近考えている。
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