何度か繰り返し書いていることの一つに、「人には「心、技、体」の3拍子が揃った時期があるが、それは長い人生の中でごく限られた期間である」、という事がある。3つの中の一つが整ったと思ったら、その中の一つを失っていた・・・という事があまりに多いのだが、自分も含め人はなかなかそれを承認しようとしない。多分、旬の期間に多少の誤差はあれたぶん例外は無い。「過ぎ去ってみないと、判らないことが多い」のは皮肉である。
エクゼクティブ・サーチという職業柄、その人の「旬」の時期を考える。これはまさに「心、技、体」と同義である。一般的なビジネス人生の中では、30台後半から50歳ぐらいまでの10年~15年というところが妥当であろうか・・・。このビジネスに身を置いて13年目となるが、この程度の期間人の盛衰をつぶさに拝見してゆくと、先程の期間がしっくり来る様に思える。人生85歳と考えても、たった15%ぐらいの期間でしかない。ビジネス人生だけを考えても、約40年として30%に過ぎない。ということは、ビジネス人生を三分割し、最初の三分の一は来たる旬の時期への「準備期間」、中の三分の一が「旬」の時期、最後の三分の一は「整理・統合期間」と見ることが出来るのではないだろうか?いわゆるビジネス人生、三分割説である。(笑)
私は、何故その様な構造になっているのか?という事を考えることがある。勿論、「旬」な時期に人は最大限のチャレンジをすべきなのだろう。何故なら、やはり成功の確率が高まるからだ。または苦難に出会ったとしても、それを乗り越え次の成功に結びつける気力や体力、知恵などが備わっている可能性が高い。私が興味があるのは、その事ではなく、何故3段階に分かれているのだろうか?という点である。特に第三ステージの「整理・統合期間」である。私見だが、大きな意味では、今まで研鑽してきたノウハウや経験、知恵などを、「世に返す」という意味があり、現実的には、物事を多面的に見ることが出来る様になり、「会社」や「人間」という複雑な生き物の全体像がつかみ易くなってくる事と深く関連している様に思う。個人的な体験だが、50歳前後から急にいろいろな事柄が繋がってゆく様な不思議な体験をしている。身に覚えのある方も多いだろう。そういう意味で、会社経営や教育関連の仕事が第三ステージには適している。しかしながら、それは第二ステージの「旬」な時期にそれ相応の苦労や成功や挫折を臨場感を持って体験した後に、という条件がつく。
最近の大手家電メーカーや国産のコンピューターベンダーなどの、大規模なリストラの記事の影響があるのだろうか?弊社へキャリアコンサルティングを依頼する候補者の方々の問い合わせが増加している。特に大手国産企業の候補者に当てはまるのだが、40台後半~60歳ぐらいで転職経験が無い方が多い。残念ながら、「旬」の時期をほぼ終え、「整理・統合」に入る段階なのだ。確かに、日本の場合、特に大企業では40台前半ではなかなか会社経営などに携われるケースは少なく、まだ課長職から次長職でラインのマネージャーであるケースが多い。まだ、会社での出世競争にも可能性がある年代だが、よくよく考えてみると、社長になるのは一人、専務や常務クラスで数人程度なので、経営陣になるのは可能性はかなり薄い訳だが、「いや自分だけは例外だ・・・」と頑張ってしまう。大方の道筋が決まってくるのが40台後半ぐらいで、さて転職活動という事なのだろうか?
一方で、そこそこの大企業では、50歳になると部下を持つラインは任せられず、専門職になるケースも多い、と言う事を大半の人々は見聞きしている筈だ。ここに矛盾がある、と私は感じている。どこに転職するにせよ、会社が期待するのは一般的には「旬」な人材である。例外は既に経営陣にいる場合、またはかなり専門性の高いプロフェッショナルの場合、これらの2つのケースのみだろう。皆、うすうす気付いているのだ。しかるに、自分の「旬」な時期にしかるべきチャレンジをされないケースが多いのが気に掛るのである。一つの目安として、少なくともその「旬」の時期に「余裕で仕事がこなせているかどうか?」は一つの基準である。だとすればチャレンジしていない訳だ。または、「ルーティンワーク化した仕事に奔走し、実は新しいチャレンジが無い」という事も当てはまる。それらが判り易い「危険信号」であると思う。
人生の「旬」の時期に後悔を残さない様・・・
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